みなさん、レジリエンス(resilience)という言葉を知っていますか?
この記事の最後にも少し触れましたが、最近、心理学の分野でとても注目されているテーマです。
日本でも徐々に広まりつつあるようで、NHKの番組でも取り上げられたりしていますね。
Sponsored Linkレジリエンスとは何か、子供のレジリエンスを育てる方法とは?
レジリエンス(resilience)とは何か
レジリエンス(resilience)とは、「深刻な状況に対し、うまく適応していく過程」や「深刻な状況に一時的に適応できないことがあっても立ち直る能力」「深刻な状況にうまく適応する結果」のことを指します。
研究者によって、過程、能力、結果という要素のどこに重点を置くかは異なり、明確な定義には至っていないようです。
もう少し一般的には「ストレスに対する抵抗力」「落ち込んだ状態から立ち直る力」という意味で用いられています。
もともとは、弾力や跳ね返す力という意味の物理学用語の一つだったものが、「ストレスを受けた時に跳ね返す力」として心理学の世界でも用いられるようになったのが元だそうです。
日本語では折れない心、と言われることもあります。
レジリエンスはもともと全ての人に備わっている
レジリエンスというと難しく聞こえるかもしれませんが、幸いなことに、これは誰でも生まれながらに持っている能力です。
例えば、みなさんも、幼い頃、親にひどく叱られたことがありませんか?
叱られたあとの自分の姿を思い出してみてください。
最初はとても落ち込みますが、徐々に泣き止み、落ち着いて元の状態に戻るはずです。
この過程や、立ち直る力がレジリエンスです。
最近では、レジリエンスは周囲の関わりによって育てられることが分かって来ています。
レジリエンスが注目されるようになった理由
私たちの生きる現代は、競争社会です。
あなたが知育に力を入れたり、色々と調べている背景には「我が子を幸せにしたい」という想いがあるはずです。
子どもの幸せとは?という問いへの答えはもちろん千差万別ではありますが、いずれ誰でも経験するであろう受験、学業成績、就職などで、本人の希望に合う進路が選べるようにと、親はサポートしていきますよね。
それがスポーツや芸術、音楽、といった内容であっても、やはり競争はついて回ります。
ここ、アメリカは日本よりもさらに学歴社会です。しかも、英語が使える人が全世界から集まってきてポジションを取り合うので、競争がさらに熾烈です。
どのように熾烈かというと、私の知人曰く”Kill each other”的なレベルなのだそう。
例えば理系の研究室だと、同じ研究室の中のメンバー同士で、互いの邪魔をするために飼っているマウスをこっそり殺しあうとか、そういうこともあるのだとか…。
一見、仲良くしているようでも、誰が研究の予算を取ったとか、誰の論文がどのジャーナルに載ったとか、小さなことで牽制しあったり、何だか聞くだけでどっと疲れてしまうような話ばかりです。
これは子どもにも例外ではなく、結局、学校のことも課外活動も小さな頃からの積み重ねですから、本当に心を許せる友達や家族というのはごく限られた存在なのかもしれません。
そうなると、やはり、子どもが自分の殻にこもり、孤立してストレスをため込むのではないかと心配になりますよね。
人は、ストレス状況下では他人との関わりが減りがちです。
そして、視野が狭まり、助けを求めにくくなり、ストレスから立ち直る力が弱まってしまいます。
しかし、こういった社会の風潮や環境は、自分の力だけではすぐに解決することはできません。
そこで、社会を変えるのはすぐにはできないため、子ども自身のレジリエンスを育てよう!という動きが出てきたのでしょう。
レジリエンスを育てる方法とは?
レジリエンスに関係する重要な要素
最近の研究で明らかになった、レジリエンスに関係する六つの要素というものがあります。
- 自尊心:自分が価値ある存在であると思うことができる気持ち
- 適応力:周囲の状況に左右されない力
- 楽観性:物事がうまくいくはずだという明るい見通しを持ち、心配しないこと
- 良好な人間関係:互いに信頼して心の内を話し合える関係
- 自己効力感:課題を乗り越えられるという期待や自信
- 生活習慣の改善:生活リズムを整えること
つまり、レジリエンスを育てるためには、この6つの要素を伸ばしていくことがキーポイントなのです。
1. 自己肯定感を高める
自尊心はすべての基礎となるものです。
自尊心が低い子どもは、ストレス状況に置かれた時に「どうせ自分はダメなんだ」と否定的・被害的に受け止めてしまいます。
その結果、落ち込んでしまい、なかなか立ち直ることができなくなりがちです。
ですから、親が子どもに対して肯定的な関わりを続けることが大切です。
子供の自己肯定感を高めるための方法は、以下の記事をご覧ください。
2. 適応力を高める(感情のコントロール)
環境変化への適応力が低いと、ちょっとした環境や状況の変化で感じる戸惑いが大きくなってしまいます。
適応力を鍛えるには、幼いうちから色々な環境や状況を実際に体験することや、挫折や失敗をしながら周囲の人の助けを借りて乗り越える経験を積み重ねることです。
子どもが失敗すると分かっていても、危ないこと以外は先回りをしないで見守ること(失敗をしたらダメな人間だ、と本人に思わせないように、失敗をしても乗り越えられることを教える)も良いでしょう。
あとは、思い通りにいかない時の感情のコントロール方法(アンガーマネージメントなど)を教えてゆくことも役立ちます。
3. 楽観性を高める
知的に能力が高い子にありがちなのですが、こだわりが強かったり、完全主義だったりという要素も、自分で自分を追い込んでしまう原因となります。
こだわりや完全主義は、良い方向に働くこともありますので、要は、使いかた次第といったところです。
自分を追い込み、落ち込んで立ち直れないといった状況にしないためには、少しの楽観性を持つことが大切だと言われています。
ときには、努力してもどうしようもないことが起きることがあります。
そういった場面で、「そういうこともあるよ!また今度やってみよう!」「次はもっとこうしたら良いのかな?」などと声をかけてあげることが、楽観的に物事を見る視点を与えてくれます。
こうした関わりにより、悔しい気持ちを抱きながらも「次、頑張ろう!」という前向きな判断をすることができるようになります。
難しい課題に直面したときに、「一度ダメだったからもう諦める」というのではなく「そのうちできるだろう」と考えて気持ちに余裕を持てることは大切です。
4. 人間関係を良好にする力(ソーシャルスキル)
自己肯定感の部分と重なりますが、子どもは親から肯定的な関わりをされ、一緒に過ごし大切にされていることがわかると、安心感を抱きます。
安心感や大切にされているという感覚は、自己肯定感を高めるとともに他者を信頼する気持ちを持つきっかけとなります。
そして、他人を信頼することは、良好な人間関係を築く土台となります。
安心して信頼できる人間関係が築けていることで、ストレス状況下でも「自分には大切に思ってくれる人がいる」「失敗しても自分はダメ人間ということではない」と思うことができ、ストレスに負けない心の持ちかたができるようになります。
5. 自己効力感を高める
自己効力感が低い子供は、課題を目の前にすると「こんなのできない」「無理だ」と悲観的になり、その気持ちから抜け出せず、取り組まなくなってしまいます。
今までやったことがないことや、高い目標を目指して努力していけるためには、自分はやればできるんだ!という自己効力感を持つことが大切です。
自己効力感を高める主な方法には、次の4つの要素が大切だとされています。
- 成功体験
- 代理体験
- 言葉による説得
- 情動の喚起
自己効力感が最も高くなるのは、成功体験を積むことです。ただし、簡単に成功できる体験では効果が薄く、努力して何とか成功する体験である必要があります。
これが、「少し背伸びをすれば届く目標を上手に設定するのが良い」と言われる所以です。
代理体験とは、同じくらいの年齢・能力・立場の子供が、努力して成功するのを見聞きすることで、自分も達成した気分になることです。
言葉による説得とは、他人から評価されたり認められたりすることを指し、情動の喚起とは、物事をやり遂げたことによる達成感や感動、高揚感を自覚することです。
6. 生活習慣の改善
毎日の生活習慣の乱れは、身体のみでなく、心の不調も来たします。
気持ちの余裕がなくなり、感情のコントロールが難しくなる原因です。
起床・就寝の時間を毎日同じにする、三食きちんと食べる、適度な運動などの生活習慣を整えていきましょう。
まとめ
レジリエンスは、子どもが毎日快適に過ごし、健全な成長発達や本人の望む人生を歩むために大切な能力です。
ただ勉強ができる、賢い、というだけでは、人生の荒波を乗り切ることは難しいですし、誰にでも予期せぬ不幸や不運な時期というものはあります。
そういった時期にストレスに負けず、糧にしていけるような心を育てたいですね。
上の六つの要素を忘れないで、サポートして行きましょう。