子育ては親にとって “初めてのことの連続” です。一つ乗り越えたと思えば、また次の課題が・・・といった感じで、色んな”初めて”が次々とやってきます。
最近は、様々なところで「子どもの褒め方・叱り方」「やる気を出させるには?」といった how to?を見かけます。きっと、みんな同じで、不安な時があるんですよね。
ところで、あなたはその how to?的なものに書いてあるアドバイスの良し悪しを、しっかり評価できていますか?
情報が氾濫している時代ですから、親としては、良い情報、正しい情報を取捨選択しなくてはなりません。
それに、悩みや問題が起きるたびにインターネットで調べるのでも良いのですが、スマホばかり見ていてはお子さんと向き合う時間が減ってしまい本末転倒ですよね😅
そこで、今日はどんなことにも応用できる、心理学の知識を伝授します!
この考え方を良いさじ加減で使うことができれば、その先、日々めまぐるしく起きる様々な出来事に対しても、ブレない方針を持てるようになり、小さなことで悩み不安になることが減るはずです。
しつけは赤ちゃんの頃から始まっています。お子さんができるだけ小さい頃にこの知識を得ておくと、その分、上手に応用していけると思います。
専門用語もできるだけわかりやすく噛み砕いてみますので、ぜひ最後までお読みください🎶
心理学用語の “学習” について
心理学における”学習”は、一般的な学習という言葉よりも広い意味を持ちます。
“学習”という心理学用語は、経験を通じて行動に持続的な変化が生じる、ないし行動パターンが変化する現象のことと定義されています。
つまり、学校や塾で行われる勉強だけでなく、自分で着替えをするようになったり、トイレに行けるようになったりする事も心理学における”学習”には含まれています。
具体的に例を挙げると
- 初めておかゆを食べて美味しかったので、その後、おかゆを出すといつも食べるようになった
- 泣くとお母さんがすぐに助けてくれるので、困った時はより大きな声で泣くようになった
- いないいないばあをしたらお母さんが笑ったので、何回もいないいないばあをするようになった
この赤文字の部分が経験、青文字の部分が行動パターンの変化を指す部分です。
親子の関係では(特に、お子さんが幼い頃は)、お子さんの”経験”の大部分を親が担っています。
ですから、まずはこの “経験”と”行動パターンの変化”を、把握できるようになりましょう。こういったメモをしてみると分かりやすくなります。
子どもの経験 | 行動パターンの変化 |
おかゆを食べて美味しかった | その後も食べるようになった |
泣いたらお母さんが助けてくれた | もっと大きな声で泣く |
いないいないばあでお母さんが笑った | もっといないないばあをする |
そうすることで、自分の体験的から「お子さんの行動は、自分の行動や声かけによって大きく変わるのだ」ということが理解できるようになります。
親としての振る舞いを自分で修正できるようになりますし、どのようにすれば、お子さんが良い経験をして良い行動パターンを身につけることができるのか、方針がとてもクリアにわかるようになるのです。
この考え方を知っていると、親として感情的になりがちな場面でも「冷静な自分」を忘れずにいられたりします。
子どもの褒め方、上手な導き方、我が子が親から見て好ましくない行動をした時の対応など、ただその時頭に浮かんでくるアイディアだけで対応するのではなく、心理学的な視点で考える材料が増えると自問自答の質も少しアップしますよ!
Sponsored Link学習とオペラント条件付けの関係を知ろう
“学習”における、”経験”の部分には、オペラント条件づけという考え方を応用することができます。
オペラント条件づけ(オペラントじょうけんづけ、operant conditioning、またはinstrumental conditioning)とは、報酬や嫌悪刺激(罰)に適応して、自発的にある行動を行うように、学習することである。行動主義心理学の基本的な理論である。
オペラント行動とは、その行動が生じた直後の、刺激の出現もしくは消失といった環境の変化に応じて、頻度が変化する行動をいう。
オペラント条件づけは、オペラント行動が自発的に行動された直後の環境の変化に応じて、その後の自発頻度が変化する学習をいう。
強化(reinforcement) オペラント行動の自発頻度の高まりをいう。
好子(強化子 reinforcer、正の強化子、強化刺激ともいう)出現したことによって直前のオペラント行動の自発頻度を高めた刺激である。
弱化(punishment) オペラント行動の自発頻度の低まりをいう。
嫌子(罰子 punisher、負の強化子、嫌悪刺激ともいう)出現したことによって直前のオペラント行動の自発頻度を低めた刺激である。
from Wikipedia
Wikiの用語だけではちょっとわかりにくいですよね💦
シンプルに説明すると、
❶正の強化とは本人にとって喜ばしい刺激によって望ましい行動が増えること
❷負の強化とは自分の嫌なことを避けるために望ましい行動が増えているということ
なのです。
トイレトレーニングの例を挙げて説明してみます。
例:親が「自分でトイレに行けるようになって欲しい」という希望を持っているとき
以下のように、親の言動によって子どもの経験、その後の行動パターンは大きく変化します。
例1)
子どもの経験:おもらしをしてしまったが、お母さんがすぐに片付けてくれ、優しく「次はきっと大丈夫だよ、早めに教えてね」と励ましてくれた
行動パターンの変化:次もトイレに行こうと考える、実行しようとする
例2)
子どもの経験:トイレで上手にできた、怒られずに済んだ、自分の自尊心も傷つかなかった
行動パターンの変化;次もトイレに行こうと考える、実行しようとする
例1は、正の強化子(お母さんが優しく対応し、励ます)によって、望ましい行動が増えています。
つまり、子どもにとって喜ばしい刺激(強化子、ここでは母親の優しさや励まし)などが報酬になって、より好ましい行動をもたらすようにしているのです。
逆に、例2は、トイレでできたことにより、負の強化子(母親に怒られる、失敗して自尊心が傷つくこと)を取り除き、望ましい行動が増えています。
❶望ましい行動をしたくなるような刺激をする
❷望ましい行動をすることで、嫌なことを回避できるとわからせる
どちらも結果としては、望ましい行動が増えるのですが、あなたは、この正の強化と負の強化、どちらを子育てに多く使って行きたいですか?
「これをしたら、楽しいことがある、嬉しいことがある」という気持ちと、「お母さんに怒られるのが嫌だからやろう」という気持ち、どちらで毎日を過ごす方がお子さんにとって良さそうですか?
答えは明白ですよね。
そういうわけで、「◯◯◯をやったら、楽しいことがある、嬉しいことがある」という状況を、生活の随所随所にさりげなく用意していくことが親の役目とも言えるでしょう。
このように考えていくと、親がどのような言動をすればよいかは、実はいたってシンプルなことに気づくことができます。
親の希望している行動や好ましい行動から、お子さんがその行動を取りたいと思えるようにするにはどうしたらよいか、そのためにどんな対応や声かけをすると効果的かを考えるのです。
声かけをするときに、「◯◯しないと、××になるよ!」という恐怖感や不安感をあおるものではなく、「◯◯したら、こんなに素敵なことがあるよ!」という風にした方が良いのは、そういうことだったんですね!
幼児にとってのいちばんの報酬は、お母さんの笑顔や褒め言葉、励まし、愛情表現。
我が家での子育ては、このオペラント条件付けを自然に活用する感じになっています。
何もしなくても子どもが自ら学び、行動してくれる時もありますので、そういった本人の心の流れを大切にしたいと思っています。
でも、なかなか、上手く行動につながらない時など、こちらも対策を練る必要がありますから、その時は自分の持っている知識を適度に利用することにしています。
オペラント条件付けをさらに具体的な目標に応用する『シェーピング』というものがありますが、家の中での子どもの行動をあまりガチガチにコントロールするのは過度に不自然な感じがするので、シェーピングを用いる時はよほど何か困ったことがあったときだけにしています。
人間の言動は様々なものが複雑に影響しあっているので単純には行かないこともありますが、幼い子どもに『何かを教えたい=学習してほしい』と思うとき、オペラント条件づけの考え方を声かけのヒントとすると、とても考えやすくなるでしょう。
そして、これは決して、親の都合のいい行動をさせたり、思い通りにすることが目的ではないのも忘れないでください。お子さんが自ら考え、選択し、行動できること、自立&自律に向けて必要なことを身につけてもらうための方法のひとつ、ということです。
しつけの上での好ましい行動が出来た場合には、とことん大げさなくらいに笑顔で抱きしめて褒めます。このときの報酬は、食べ物やおもちゃ、テレビやDVDやゲーム、お小遣いではなく、愛情表現です。
あ、でも、トイレトレーニングの時は少しシェーピング寄りな感じで、好きなキャラクターのパンツやごほうびシールもしっかり使いましたけどね(笑)
基本的に、モノで釣るよりも、お母さんお父さんの笑顔やありがとう、大好き、愛してる、といった言葉、ワクワク楽しい雰囲気、ハグやほっぺにキスなど「子どもに明らかに伝わるくらいの愛情表現」をすることにしています。
テレビやゲーム、お小遣いを報酬にするのは、中学生や高校生になってからで良いでしょう。
子育てで一番大変なのは、親が、ベストの選択を悩み考え、実践する過程。
考えるのが苦手だからといって、その場の感情で行動してしまっていませんか?
でも、お子さんが小さいうちから一つ一つ考えて対応していくことは、親側のトレーニングにもなるのです。
子どもの人生を左右することなので、ぜひ、手をかけ、目をかけ、時間をかけ、やりましょう!
なぜなら、親子関係は10歳くらいになると、軌道修正がどんどん難しくなるからです。
子どもの記憶の中に、どんな言葉をいっぱい残してあげたいですか?
自分の起こっている顔と笑顔、どっちを覚えていて欲しいですか?
親子の毎日のやりとりは、そのままお子さんの人生になっていきます。
お子さんが成長し、親子関係が崩れて困り果ててからセラピストに相談に来られるよりも、幼い頃から毎日少しずつ気を配ることの方がずっと効果的なのです。
声かけのポイントは、やってほしいことを具体的に伝え、過程を褒めること
例1:子どもがなかなかおもちゃを片付けないとき
ついつい言ってしまいそうな言葉、やってしまいがちなこと
- 早く片付けなさい!
- 何度言えばわかるの?さっきも言ったじゃない
- どうして片付けないの?
- もう、片付けないならおもちゃ捨てちゃうわよ!
- 母親が代わりに片付ける
代替案
- このおもちゃのおうちはどこかな?棚の右端のおうちまで一緒に帰ってあげよう〜
- ◯◯ちゃんは絵本のお片づけが上手だよね、ママにどうやってやるか教えてくれたら嬉しいな
- 脱いだお洋服はどこに入れるといいかな?洗濯カゴさんが待っているよ!ありがとう
- きれいに整頓するとおうちがきれいになって気持ちいいね、ありがとう
- ちゃんとお片づけしているとぬいぐるみも大事にしてくれているってわかるね、優しいね
例2:子どもの身支度が終わらないとき
ついつい言ってしまいそうな言葉、やってしまいがちなこと
- 早く着替えなさい!
- 歯磨きしないと虫歯になるよ
- 遅刻しちゃうから急いで!
- もう、いい加減にしなさい
- 親がしびれを切らして無理やり着替えさせる、歯を磨く
代替案
- どっちの洋服が好きかな?(3つくらい具体的な選択肢を挙げて、最後は選ばせる)
- さっき美味しいごはんを食べたから、虫歯さんが狙ってるよ〜 一緒にやっつけよう〜!
- もうすぐ先生と約束した時間になっちゃいそうだよ、お約束守れるかな?よーいどん!
- ◯◯はあと3回でおしまいにして、次は⬜︎⬜︎をやろうよ!
- ママも手伝うから、時間に間に合うように協力してくれるかな?
例3:毎日の勉強やピアノの練習を習慣化するために
ついつい言ってしまいそうな言葉、やってしまいがちなこと
- 勉強しなさい!しないと◯◯になって大人になってから困るわよ!
- ピアノの練習はしたの?しないと上手くならないよ
- 勉強やピアノの練習をしないことを叱る
- もう、いい加減にしなさい
- 無理やりやらせる
代替案
- 取り掛かるまでに時間がかかるときは「先にお母さんが始めるよー」と席に着く
- う〜ん、この問題の答え、わかる?ママに教えて!と子どもに聞く
- プリントや曲が1つ終わるたびに、どこが良かったか、取り組みの過程を褒める
- ◯◯ちゃんのピアノ聴きたいな〜♡大好きなんだもん〜とリクエスト
- ピアノを弾いている姿を毎週1回ビデオに撮る、そのために曲を仕上げることにする
- 休日は宿題やピアノの練習が済んだら公園やお買い物に出かる、という流れを暗黙の了解にする
3年間、我が家で実践した結果は?
いつも我が子の話になってしまって恐縮ですが、私のやり方がどういう結果になっているかをいちばんよく反映しているのがウチの娘ですので、どうかお付き合いください。
上に書いてあるようなことを私が実践していく中で、彼女は、母から色々と言われる前に自分でやる方が自分のやり方で好きなようにでき、早く済むこと、そのあとでやりたいこともたくさんできるということを学習したようです。
最近は朝起きて食事や身支度をし、その後、自発的に勉強とピアノの練習をしてからプリスクールに行くようになりました。まだまだ日によってムラはありますが、「3歳児でもそんなことができるんだな〜」と時々親もびっくりさせられます。
自分で決め、自分を律して行動できることが毎日続いてくれたら、本当に素晴らしいことだと思っています。親サイドも試行錯誤しながら、本人が続けていけるような工夫を続けたいと思います。
また何か有用な情報があれば記事にしたいと思います。
心理学の知識、ぜひ、上手に取り入れてみてくださいね!