スマホ育児とその影響を科学的に検証した論文を読んで実践。親のスマホ離れがもたらしてくれた予想以上の効果とは?

子どもにスマホを手渡してしまうことはなくても、子どもの前でテキストメッセージ(SMS)やEメールを送りたくなることは、ときどきありませんか?

プレイデートの約束なんかも、結局はママ主導ですし、学校関連の連絡も多いです…よね。

このご時世、スマホ無しで生活をするのはとても大変なことです💦

その一方で、「スマホ育児は良くない」ということが様々な場面で言われるようになり、皆さんそのことはご存知だと思います。

生活上スマホは必要だけど、子どもにとって良くない、というこの矛盾した状況!

「子ども関連の連絡だってあるし、一体、どうしたら良いの⁉︎」と疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

じつは、私の職場のSNSからも、結構「子どもと一緒の時はスマホを触らないで!」といったアラートが、研究論文のリンク付きで流れてきます。

最近、そういった研究報告などが増えてきていることもあり、専門家のあいだでは「子どもといるあいだはスマホはNG!」というのはもはや通説になりつつあります。

そんな流れに乗って、わたくしも、思い切ってスマホを子どもの前で使うのを極力やめることにしてしまいました。

2ヶ月ほど経過しましたが、思っていた以上に良い効果があったのでご報告したいと思います。

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赤ちゃんの時期へのスマホ育児の影響についての研究

神経発達が阻害されるという研究報告

カリフォルニア大学アーバイン校(UC Irvine)のDr.Tallie Z.Baramらは、スマホに気を取られている母親に育てられた赤ちゃんは、正常な脳の発達が阻害され、成人後の感情障害のリスクが高まると述べています。

感情障害というのは今は気分障害と表されることが多くなっており、主にうつ病や躁うつ病のことを指します。

Put the cellphone away! Fragmented baby care can affect brain development

これは学内のニュース記事のようですが、タイトルで”Put the cellphone away!”とまで書かれると、ちょっとドキッとしますよね…。

この先生は神経解剖の先生で、ラットの脳などを使って、神経発達の研究をたくさんされています。

>> Fragmentation and high entropy of neonatal experience predict adolescent emotional outcome

>> Fragmentation and Unpredictability of Early-Life Experience in Mental Disorders

大人になってからのうつや不安障害に赤ちゃんの頃のケアが影響を与えているという仮説といい、それを人とラットで調べるなど、興味深い研究ばかりです。

 

UCI Newsの記事でDr.Baramが仰っていることをすごくシンプルにまとめてみると、

脳のニューロンのネットワークは、母親の一貫したケアによって形成されて行くものだが、母親が赤ちゃんのお世話を中断してスマホのメールチェックなどをしていると、ケアのパターンが定まらない。

母親によって繰り返し行われる赤ちゃんのお世話のリズムやパターンは赤ちゃんにとって非常に大切なもので、赤ちゃんの脳の神経ネットワークは継続的にそれにより刺激を受けたり、次の行動を予測しながら発達していく。

母親がスマホに気を取られて、赤ちゃんのケアのパターン化や繰り返しに支障が生じると、その影響は、実は幼児期ではなく、大人になってからリスキーな行動が増えたり、薬物依存になったり、うつ病を発症したりという形で表れてくる。

ということなのだそうです。

スクールエイジの子どもたちへのスマホ育児の影響についての研究

子どもとスマホ、どっちが大事?

2014年、TIME紙に“Don’t Text While Parenting”という記事が掲載されました。

この記事でも、Facebookをチラッと見ることやEメールへの返信といったちょっとしたことでさえも、子どもを待たせたり、子どもが親の気を引こうとしなくてはならなくなるなどの弊害を生むと述べています。

この記事で引用されていた研究は、ボストンメディカルセンターのDr. Jenny Radeskyらのもので、55グループの親子のファーストフード店での過ごし方を抜き打ちで調査したという内容です。

そして、いかに多くの親がスマホに熱中しているか、子どもたちがそんな親の気を引くためにどんな振る舞いをしたか、スマホに夢中な親とその子どものかかわりがいかに希薄になってしまっているかを調べました。

>> Patterns of Mobile Device Use by Caregivers and Children During Meals in Fast Food Restaurants

55組中40名の親が食事中にスマホを使っており、スマホに夢中な親の中には、気を引こうとした子どもに無情な態度を取る姿もしばしば見られたとのこと。

そんな状態では、子どもからして見れば「自分よりもスマホの方が大事なの⁉︎」という気持ちになりますよね。

この研究は脳の機能などを調べたものではありませんが、子どもの心の発達では、親に手をかけ、目をかけてもらうことは非常に大切な役割を果たしていますので、子どもよりもスマホ、という図は良いはずがありません。

 

同じライターさんの記事ですが、TIME紙に「TVも、見せすぎると悪影響があり、しかも、つけ流しのみでも発達に影響が生じる」という記事も見つけました。

Background TV: Children Exposed to Four Hours a Day

私たちが思う以上に、親の行動は子どもに影響を与えているのですね…。

 

2ヶ月間、我が子の前でスマホを使用するのを極力やめてみた

スマホと子どもの関係についての研究結果を読んで

毎日のことなので意識して行動するのを忘れてしまいがちですが、親子の自然なコミュニケーションや関係性を大切にすることは、私たちが感じている以上に重要だということがわかりました。

赤ちゃんの時期に基本的な信頼感を築き、壊さないこと、その先は「親はいつも見守ってくれている」という安心感を揺るぎないものにしてあげることは、心理学的に重要視されているだけではなく、科学的な側面からも意味深いことなのですね。

スマホだけではなく、正直、家にいてもついついパソコンを開いてEメールの返事をしたくなることもありますが、そういったことも結局のところ、子ども以外のことに親が夢中になっているという意味では同じです。

というわけで、「良くない」と知りながら継続するのもどうかと思い、家で子どもが起きている間はスマホやiPad、パソコンは必要時以外、極力見ないことにしてしまいました。

最近、テキストもEメールも返事が遅いので、私は周りの人から”レスポンスの悪い人”だと思われていることでしょう…。

でも、ここは優先順位をはっきりさせておく必要があります。

そして2ヶ月が経ち、このチャレンジにはそれなりの成果がありました。

私は本当にやってみて良かったと感じています。

スマホを極力見ない、見るときは理由を説明し一緒に見ることで安心感を

やり方はいたってシンプルで、自分のカバンの中にスマホをしまうだけです。目につく場所に置かないようにします。

そうして、子どもと一緒のときにはスマホを極力見ないことにして、まず気づいたのは、スマホを使用しないことで子どもの目を見て会話する時間が増え、我が子の心の機微により気付きやすくなったことでした。

3歳児というのは、もう空気を読んで発言したり、親に気を遣ったりできてしまう年齢なので、親が何か別のことをしているときは多少は待っていてくれたり、我慢したりできちゃうんですね。

でも、それをさせている時間というのは、彼女が寂しい気持ちになっている、ということ。顔や態度に出すか出さないかは別として、心の中ではやきもちを焼いたり悲しんでいるという事実を、見て見ぬ振りしてはいけません。

せっかく一緒にいるのだから、そんな時間は少ない方が良いのです。

それに、こちらが意識をして「今、ママはあなたのことだけ見ているよ!」という姿勢で向き合うと、何をするにしても子どもの目の輝きが違いますよ!

「あぁ、どうして私はこのことに早く気づかなかったのだろう」と反省ばかりです。もっと早く実践していれば良かった!

時間を確認したりするときは「今、何時かな?一緒に見る?」と言ってスマホを見たり、なぜそれをする必要があるのか、次にはどんな予定があるのかなどを説明したり、時間を見たときは時計の読み方など、見たものの内容を説明したりするようにしました。

そうすることで子どもの認識も「よく分からない機械を使って自分の知らないことをしているお母さん」から「必要があって便利な道具を見ているお母さん」に変わるのです。

ほんの些細なことではありますが、小さな子どもにとっては安心感が違うのですね。

子どもと一緒にいるときにスマホを見ないことに決めて得られたもの

心が満たされて自立心が芽生え、一人寝、お手伝いなど、できることが増えた!

一緒にいる間に思いっきり遊んであげることで、本人の欲求が十分に満たされているかどうかが以前よりも良くわかるようになりました。

満たされると今度は「誰かの役に立ちたい」という気持ちが芽生えるようで、私が掃除や料理をしようとすると「一緒にやる!」とやる気マンマンで手伝ってくれます。

もちろん、まだまだ上手くできないこともあるのですが、オモチャを片付けたり、洗濯物をたたんだり、野菜を洗ったり、教えれば教えるほど、どんどんできることが増えて行きます。

それを褒めると、次からは何も言われなくても自分から進んでやってくれたりもしています。

そして、なんと、読み聞かせの後、寝かしつけをしなくても一人で寝るようになったのです!

「大丈夫だよ!一人で寝られるよ!」と、ニコニコ笑顔でベッドに向かう姿には感動してしまいました。

寝かしつけに時間を取られなくなったので、思いがけずパパママにも自由な時間が!!!

 

それから、心が満たされている状態だと、家族やお友達への思いやりの気持ちも普段以上に持てるようです。

気持ちにゆとりがあるときのほうが人に優しくなれるのは、こどもも大人も同じなんですね。

 

おまけになりますが、お手伝いのときは、ついでに色んな情報をアナウンスしてあげましょう。

料理をするときは野菜の断面図を見せたり、野菜の育ち方や収穫のこと、季節の野菜、名産地など、知っていることを教えたり、知らないことは一緒に調べたり。産地の話題から地図に話を広げたり。

これは、図鑑の導入にもつなげていくことができます!

せっかくひらがな・カタカナも読めるようになったことですので、スマホやiPadよりも先に図鑑を渡してあげたいですよね😊

未就学児にオススメの日本語の図鑑と、その読み方・使い方

2017.01.08

子どもの親の気を引くための行動が激減

今振り返ってみると、以前はテキストに返事をしたりしているときに、隣に来て袖をひっぱったり、構ってと話しかけてきたり、膝によじ登ってくるようなことがありました。

それからオモチャをザバーッと広げて見たり、わざといたずらをしたり、といったことも…。

それはそれで可愛らしかったのですが(笑)

私の気を引くために色んなことを考えさせてしまっていたと思うと、なんだか申し訳なかったです。

今は、気を引くための行動ではなく、本人が本当にやりたいと思っていることを次から次へと持って来て、しかも比較的集中してその遊びや取り組みができるようになっています。

「親が振り向いてくれるから、構ってくれるから」という理由での行動が増え過ぎると、常に親の注意を引くため、親に認めてもらうために努力するようになってしまいます。

将来、「自分のやりたいことは何なのか」を親の顔色を伺って決めるようになってしまうかもしれません。

健康な心の成長のためにも、「この本が好きだから読む、読みたいから読む」「ママとこのお話がしたいからする」というような、本人のまっすぐな想いを大切にして行きたいです。

まとめ

スマホの使い方について考えたり悩んでいてこの記事を読んでくださった親御さんは、きっと、お子さん想いの素敵なパパさん、ママさんなんだと思います。

その感覚は、決して間違っていません。

最近ではレストランなどでも子どもにスマホを渡して、スマホに子守をさせてしまっているような方も見受けられますが、こういったデバイスの使い方はインターネットのリテラシーと合わせて、ペアレンタルコントロールをした上できちんと教えることが大切だと思います。

専門家たちは、テキストやフェイスブックのチラ見すらやめるよう警告している状況だということを知っておきましょう。

特に小さなお子さんがいる家庭で親のスマホの使い方を検討してみることは、決して無駄にはなりません。

我が家の場合には、上に書いたような思いがけない効果もあり、子どももまた一回り成長してくれました。

我が家でのスマホ、iPad、パソコンの使い方についても、徐々に検討していきたいと思っています。

ほんの少しだけでも試してみると感じることがたくさんあるはずですので、気になっている方はぜひご検討ください🎵

ABOUTこの記事をかいた人

アメリカで娘を出産し、バイリンガル育児をしている精神科医ママの日記です。メンタルヘルスの専門家としての視点や、研究論文などから得たヒントをもとに上手な声かけや楽しく学ぶ習慣作りをし、親子ともに楽しくストレスの少ない子育てを心がけています。英語の絵本やおすすめ教材、健康管理や家事の時短のコツなど、日々の試みから役に立ったことなどを発信中です。