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バイリンガル育児で大切にすべきメンタルケア。我が子をアイデンティティクライシスに陥らせないために

バイリンガル育児を始める前に私が学んだことをこちらの記事にまとめました。

バイリンガル育児の基礎作り:親の準備として知っておきたい基本的な知識

2016.10.10

こういった、知識の部分は、結構たくさんの方がブログに書いていらっしゃるのですが、メンタルケアの部分というのはまだまだ情報が少ないように思います。

バイリンガル育児とアイデンティティの確立を心理面から考える

先日、エリクソンのライフサイクル理論を取り上げました。まさに彼がアイデンティティという言葉の生みの親ですね。

アイデンティティとは、端的に言うと「自分は自分である」という確信や自信のことです。

青年期(12~22歳)くらいになると「自分とはどんな人間か」「何になりたいのか」に悩んだり、「自分は自分である」という自信を持つためにもがき苦しむ時期があり、その中で、自分なりの価値観や仕事などを見出して、社会生活を送っていくようになります。

無事にアイデンティティを形成することができると、その人は自分の人生を捧げるべき対象を発見できるようになります。

しかし、青年期は心も体も揺れ動く不安定な時期なので、自分のことが分からなくなって混乱し、うまく同一性を確立できないままになると、人格や情緒が安定せず、依存的になったり、対人的な不安が強くなったり、非行や選択を回避するなど、社会にもうまく適応できなくなってしまう可能性が高まるとされています。

エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)と、親として気をつけたい声かけや関わりのポイント

2016.12.03

この理論が必ずしもすべての人に当てはまるわけではないのですが、バイリンガルに育てるということは、クライシスに陥るリスクが増えるということでもあるので、メンタル面のケアはとても大切です。

今日は、彼の理論に沿って、バイリンガル育児でどのようなことを大切にしていけばよいのかを考えてみることにしました。

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アイデンティティ確立までの、エリクソンのライフサイクル理論による発達段階

  1. 乳児期 (0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感を育む時期
  2. 幼児前期 (1歳6ヶ月頃~4歳):自律性が身につく時期
  3. 幼児後期 (4歳~6歳):積極性(自発性)が伸びる時期
  4. 児童期・学齢期 (6歳~12歳):勤勉性を定着させる時期
  5. 青年期 (12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)を確立する時期

12歳以下の段階でどのような準備ができているかによって、アイデンティティの確立にも大きな影響がありそうですね。

バイリンガルとひとことで言っても、言語能力の伸び方は様々

中島和子さんの著書によると、バイリンガルは、理論的には3つに分けられる、とされています。

実際には二重バイリンガルになることは稀で、平衡バイリンガルと偏重バイリンガルが多いそうです。母語話者と同じ能力というのは、認知能力や複雑な表現も含みますが、言語の発達は年齢によって差があるものなので「年齢相応の」という考え方が必要です。

その上で会話だけでなく、二言語に関する読み書きも年齢相当程度にできる人をバイリテラシーと呼ぶそうです。

 

また、二重バイリンガルの対極にセミリンガルという言葉が使われていましたが、これは「子どもの人権を侵害する可能性がある差別用語として、最近は使用することが避けられるようになっています。

セミリンガルというと、どの言語も不十分で、きちんと話せない、書けない、というイメージですが、子どもの場合は、環境の変化や、十分な刺激を与える工夫でまだまだ伸びる可能性を十分に持っているので、海外赴任などで、子どもがバイリンガル環境に置かれて両方の言葉が不完全になるケースは「一時的セミリンガル現象」として区別すべきなのだそうです。

 

赤ちゃんの頃からのパーフェクト・バイリンガルの子のアイデンティティ

このブログでは、ベビーの頃から英語と日本語を学ぶことについて書いています。

我が子と同様に生まれたときから海外に住んでいたり、日本にいても、英語の保育環境で長時間過ごすという形で二重バイリンガルに育っている場合には、その子の中には日本語の自分と、英語の自分の二つのアイデンティティが存在していることが多いです。

日本語で話す時は日本語で、英語で話す時には英語で考えていますし、語彙の習得や学習もそれぞれのアタマを使って行っています。

なので、このような場合には、両言語をバランス良く、年齢相応に伸ばす工夫が必要です。

 

アイデンティティ・クライシスが起きてしまう状況とは?

中学生以下くらいの年齢の子で、日常的に英語をしゃべっていた子が、まったく英語から遮断された環境に突然放り込まれると、アイデンティティ・クライシスを起こす危険があります。

アイデンティティは、自分一人の力で獲得するものではなく、家族や、先生、友達など、他者との関わりのなかで確立されていくものです。

クライシスに陥りやすい状況としては、やはり環境の要素が大きいでしょう。

例:

  • 日本人家庭で海外生活をしていたが、日本に本帰国することになり、日本のいわゆる普通の学校に転入
  • 英語のプリスクール・インターナショナルスクールに在籍していたが、中学生くらいでいわゆる一般的な日本の学校に入学

これを避けるためには、以下のような対策を取ることができるでしょう。

  • 日本に帰国する際にインターナショナルスクールを選び、家庭や習い事で年齢相応の日本語を教える
  • 日本の幼稚園・学校にプラスして、同じくらいの英語時間を確保する(英語学童で毎日数時間英語を使う、または外国人のお手伝いさんやナニーを雇うなど)
  • 中学以降も、ネイティブの指導者に学べる環境を維持する(日本の中学以降の英語教育ではなく、アメリカやイギリスの学年相応のスキルをつけさせる、または帰国子女クラスなど、似たような境遇の友人ができるような環境を用意する)

もし住む場所などを選ぶことが難しい場合でも、例えば良い友人や師に巡り会えたことで人生が変わる、という話もありますので、情報収集を怠らず、ベストの選択をすることを心がけましょう。

我が子をアイデンティティ・クライシスに陥らせないために

1. 乳児期:基本的信頼感を育む時期

乳児期は親との一体感や信頼感を経験する時期で、基本的信頼感という『他者からありのままを受け入れてもらえるのだ』という安心感と『他者に受け入れてもらえる自分は価値のある人間だ』と思える自分に対する信頼感を獲得していきます。

基本的信頼感を獲得した子どもは「希望」を抱くようになります。これらは、将来的に他者と情緒的で深い人間関係を築くための、そして、高い自己肯定感を持つための基盤となるものす。

誕生から1歳半くらいまでの時期は、たくさんの愛情を注いでお世話をし、スキンシップをたくさんすることをお勧めします。

この時期に既に英語を導入するときも、マザーグースを歌ったり、読み聞かせをするなどして、とにかく、親子で楽しむことが大切だと思います。

できるだけ自然な形で、日常のツールとしての英語を聞かせてあげたり、英語を話している人の輪の中にいる時間を積極的に作ることだと思います。

自然な形というのは、つまり、学習させるのではなく、英語を日々の道具として認識してもらうことです。

2. 幼児前期:自律性が身につく時期

自分の意思で行動できるようになると、徐々に親からの「しつけ」が始まります。本人の気持ちと違うことを大人から求められる機会が増え、子どもは不安を感じる機会が増えますので、抱きしめたり『大好きだよ!』といった声かけを毎日するなどして、心を満たしてあげましょう。

成功すると褒められ、失敗すると恥ずかしい思いをする、といったことがわかるようになっています。

英語に関しても、「自分は英語が上手だ、下手だ」「今日はしっかりと思いを言葉にできた」というふうに、本人なりに自己評価をし始めます。

この時期に大事なのは「自分にもできる!」「話せる!」という、英語を継続的につかっていくことへの自信をつけてあげることです。

親からの過干渉や、頭ごなしに叱られるようなことは、自信喪失の原因になります。

逆に、そういった自分を洞察する力のある子には、フォニックスを導入して、他の子がまだできていないことをできるようにしてあげるのも、自信をつけさせてあげるための一手です。

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この時期はイヤイヤ期もあり大変ですが、叱り方や声かけのポイントをぜひ心得ておきましょう。

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3. 幼児後期:積極性(自発性)が伸びる時期

幼児後期は、ルールを守ったり、親や友達に合わせたり「目的」を持って行動することができるようになります。同時に、失敗して叱られたり失望されたりするのではないかという恐れ(罪悪感)も生まれます。

この時期になると「なぜ自分は英語を話しているのか?」「上手くしゃべれないのに英語で話す必要があるのか?」「自分は何人なの?」といったことを親に質問してくることもあるでしょう。

周りのお友達とのつきあいなどで、本人の言語スキルもアイデンティティも影響を受け、変わって行きます。

まずは、それぞれの言語を話す、または両方を話すお友達を、バランス良く作りましょう。

そして、家庭や保育園・幼稚園などで自分の思いを表現しきれずに困っていることはないか?他の子と自分の言語能力を比べて落ち込んでしまっていないか?など、子どもをよく観察して把握しましょう。

何か、本人が自信を失いかけているような原因が見つかった場合には、子どもへの誠意を持って、サポートする姿勢を見せることです。

そこで自分の子どもへの誠意を見せられるかどうかが、将来、子どもが親を信頼し続けてくれるかどうかの分かれ目だと思います。

例えば、英語の絵本の読み聞かせを増やして語彙をサポートする、上手く気持ちを説明できなかったときには、何をどのように言いたかったのかを聞き出して英語で伝える練習をする、英語のチューターや楽しくスキルアップできる教材を探す、など、一歩一歩ではありますが、できることがあるはずです。

要するに、本人の悔しい気持ちを理解し、寄り添い、応援することです。

口では「もう嫌だ」「話したくない」と言うこともあるかもしれませんが、心の奥にある「本当はもっと上手になりたい」「上手に伝えられないから嫌なんだ」という気持ちを見逃さないようにしましょう。

お子さんが荒れているときに親がそれに反応して感情的になって怒ると、余計に本人を追い詰めてしまいます。理由も聞かずに頭ごなしに決めつけたりしないことが大切です。

荒れているときは、少し気分転換をさせ、そのあと、落ち着いて親子で話をしましょう。お子さんがなかなか口を開きたがらないときなどは、抱きしめながら一緒にいるだけでも違います。または、ソファーで隣に座って同じ方向を向きながら話すなども良いでしょう。

あとは、しつこいくらい「大好きだ」ということを親が伝えてあげることと、良くできたことはとことん褒め、本人を認め、信じ、普段から話を良く聞くことです。

子どもの様子がいつもと違うとき、それはSOSのサインだと受け止めましょう。

4. 児童期・学齢期:勤勉性を定着させる時期

この時期まで英語を継続的に使っていた場合、その子にとって英語は日常のツールとして定着していると思います。

児童期に親ができることはまだまだたくさんありますが、乳児期や幼児期に比べると、さらに親の知力・資力が問われる場面が増えてくるでしょう。

  • 海外旅行や、他国の方と積極的に関わることができるチャンスを作る:英語がいかに世界中で使われ役に立つ言葉であるかを体験的に知ってもらい、視野をどんどん広げる
  • フォニックスを習得させる:英語の本を自分で読むことができると多くの知識や技術を英語で学べるようになる。英語で学べるようになると、日本で学ぶよりも10倍以上の情報を入手できる
  • 学校、習い事、学童などを上手に組み合わせ、両言語の環境で長時間過ごす:友達との集団生活に適応し、社会の一員になろうとすること
  • コンペティションに参加させる:目標を達成することや力比べをすることで周囲から認められる喜びを知ったり、自分を客観視しさらに磨きをかけるきっかけをつくること、世界にはとても優秀で人柄もよく努力家な同世代の仲間がたくさんいるということを知ること

これらは、自己効力感を育てることにもつながります。

小学校高学年にもなると、将来の目標が多少なりとも見えてきている頃だと思います。

せっかく小さな頃から英語に親しんで来たのですから、視野をどんどん広げ、両言語を使って活躍する自分の姿をイメージできるようになってもらえたら良いですね。

じつは、私が通っていた地方の公立中学では、クラスに帰国子女の子がいましたが、その子は英語の発音が良いためにかえって目立ってしまい、敢えて「日本語訛りの発音」のマネをしていました。最初は明るい子だったのに、主張が強いと言われ、徐々に性格も暗くなっていってしまいました。

別の帰国子女の友達は「自分は英語ができる、話せる」と自信を持っていたのに、同じく地方の公立中学に入ったために英語をABCからやることになり、日本の受験英語をやらされることがとても苦痛だったそうです。いつも英語の先生に刺々しい態度だったので、目をつけられてしまっていました。

二人とも、元々とても人柄もよくて優秀で努力家で素敵な人たちなのです。でも、結局、英語は全く使わない職業に就きました。どこかで英語を年齢相応に伸ばしていくことをやめてしまったのです。

もし二人が例えば帰国子女クラスのある中学や高校に入っていたら?英語の補習校が近くにあったら?海外の大学に進学していたら?

もしかしたら「英語というものを、もっと自分のアドバンテージとすることができたのでは?」と考えてしまうのです。

視野を広げること、自分が成功するイメージを持てることと同時に、折れない心を作ることも大切なんだと、彼女たちから学びました。

辛いことがあったとき、困難に立ち向かうときの「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」などを、レジリエンスと呼びます。

幼い頃から親の愛情をたっぷり注いでもらい、自信のある子に育っていれば、その後も些細なことでは心折れない、レジリエンスを鍛えていくことができます。

こういった本もぜひ、読んでみてくださいね!