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エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)と、親として気をつけたい声かけや関わりのポイント

先日、心理学の歴史をオーバービューしてみました。

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2016.12.01

子どもの発達は、心理学だけでなく教育学や社会学といった分野の学者にも研究されていて、何から学べば良いかわからないという声もよく聞きますが、その中でも、誰にでもわかりやすく、役立つものというのがいくつかあるように思います。

というわけで、今日はエリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)をピックアップします。

このライフサイクル理論が発表されたのは随分前の話になりますが、今も人の発達を考える上で重要な理論の一つとされています。

「アイデンティティ」という言葉、きっとあなたも聞いたことがありますよね?

バイリンガル育児をされている方であれば、なおさら気になるキーワードだと思います。

この記事では、エリクソンのライフサイクル理論における、人間の各発達段階と発達課題(危機)について、紹介します。

エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)とは

ライフサイクル理論とは、発達心理学者のエリク・H・エリクソンが提唱したもので、人間が生まれてから死ぬまでに心理社会的にどのように発達するかを示したものです。

この理論では、人間は予定された発達段階に沿って成長するものだと考えられています。そして、その各発達段階には乗り越えるべき課題(発達課題)と危機(心理社会的危機)が設定されていいます。

発達課題をどのように乗り越えるか、または乗り越えられないといった場合に、その後の人格形成にどんな影響が及ぶのかを考えてみると、日頃の子育てでどのような関わりや対応を心がけると良いのかが見えてきますよ!

我が子をみる限り、この発達段階には多少のズレが生じることはありそうですので、お子さんの成長段階が多少当てはまらなくても幅を持って捉えることも大切だと、個人的には感じています。

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心理社会的発達理論の8つの発達段階

エリクソンによると、人間の生涯は以下のように8つの発達段階に分けられるのだそうです。

  1. 乳児期 (0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感を育む時期
  2. 幼児前期 (1歳6ヶ月頃~4歳):自律性が身につく時期
  3. 幼児後期 (4歳~6歳):積極性(自発性)が伸びる時期
  4. 児童期・学齢期 (6歳~12歳):勤勉性を定着させる時期
  5. 青年期 (12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)を確立する時期
  6. 成人期 (就職〜結婚の時期):親密性の適切なバランスを身につける時期
  7. 壮年期 (子供を産み育てる時期):世代性(次の世代を育てること)に興味を増す時期
  8. 老年期 (子育てを終えリタイアする時期):自己統合(統合性)を獲得し、人生を受け入れる時期

では、それぞれを詳しく見ていきましょう。

1. 乳児期:基本的信頼感を育む

乳児期は基本的信頼感を育む大切な時期です。

ベイビーが親との一体感や信頼感を経験する時期で、特に母親の役割が大きくなります。

基本的信頼感とは、『他者からありのままを受け入れてもらえるのだ』という安心感と、『他者に受け入れてもらえる自分は価値のある人間だ』と思える自分に対する信頼感のことです。

基本的信頼感を獲得した子どもは「希望」を抱くようになります。

これらは、将来的に他者と情緒的で深い人間関係を築くための基礎になるものです。そして、自己肯定感の基盤とも言えるでしょう。

乳児期のうちは、一人で何かをすることはできません。授乳やミルクをあげること、たくさん抱っこしてあげること、おむつを替えてもらうこと、あやしたり寝かしつけたりしてもらうなど、愛情を持ってたくさんお世話することで、ベイビーの心に基本的信頼感が育まれていきます。

乳児期に基本的信頼感が十分に育まれないと、安心感や自信が持てず、自分や他者に対する不信感が募っていきます。

乳児期に芽生えた不信感は払しょくすることが難しく、その後の人生を通して心の中に残ることが多い深刻なものになりがちであると言われています。

赤ちゃんの誕生から、1歳半くらいまでの時期は、とにかくたくさんの愛情を注いでお世話をし、スキンシップをたくさんすることをお勧めします。

 

2. 幼児前期:自律性が身につく時期

歩き始めたり言葉を喋り始める幼児前期には、子どもの身体機能が発達し、自分の意思で行動できるようになります。

自分の意思で行動できるようになると、徐々に親からの「しつけ」が始まります。本人の気持ちと違うことを大人から求められる機会が増えますし、共働き生活の家庭では保育園に通い始めたりすることもあり、一緒に過ごす時間も短くなりがちです。

子どもは不安を感じる機会が増えますので、抱きしめたり『大好きだよ!』といった声かけを毎日するなどして、心を満たしてあげましょう。

そうすることで、子どもは「意思」という力を獲得します。

幼児前期の発達課題は「恥・疑惑」だと言われています。

成功すると褒められ、失敗すると恥ずかしい思いをする、といった経験を積み重ねて、徐々に自律性(自分をコントロールすること)を身につけていく時期です。

親からの過剰な干渉が続いたり、頭ごなしに叱られるなどの経験が重なると、自分の行動を恥じ、自信が持てなくなる原因となります。

自分自身の選択や決断に対して「失敗するのではないか」「バカにされるのではないか」といった疑惑を持つようになってしまうと、その後の受験や、就職活動や結婚など人生の選択にも大きな影響があります。

この時期はイヤイヤ期もあり大変ですが、叱り方や声かけのポイントをぜひ心得ておきましょう。

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3. 幼児後期:積極性(自発性)が伸びる時期

幼児後期は、自分の意思で行動することができる一方で、自制する心も伸びていきます。

ルールを守ったり、親や友達に合わせることや、「目的」を持って行動することができるようになります。

様々なことにどんどんチャレンジしていく積極性(自発性)が高まりますが、同時に、失敗して叱られたり失望されたりするのではないかという恐れ(罪悪感)も生まれます。

この時期に家庭や保育園・幼稚園などで怒られてばかりいたり、他の子と比べられてばかりいる子は、徐々に周囲の目を気にするようになったり、自ら進んで行動することができなくなったりします。

4歳にもなれば、自分が場に応じた適切な振る舞いができているかどうかは、本人もわかっているはずです。親が感情的に怒ったり、理由も聞かずに頭ごなしに決めつけたりすることは止めましょう

良くできたことはとことん褒め、本人を認めることと、普段から本人の話を良く聞くことが大切です。

悪いことをしてしまった時にも、気持ちを聞き出したり、落ち着いて大切なことをもう一度説明するような諭し方を心がけると良いでしょう。

 

4. 児童期・学齢期:勤勉性を定着させる時期

この時期になると学校生活が始まり、多くの知識や技術を学習したり、友達との集団生活に適応したりすることになります。

この理論での『勤勉性』とは、社会に関心を示し自発的にその一員になろうとすることや、取り組んでいるものごとを完成させることで周囲から認められることなどを学習することを意味しています。

そういった「有能感」を感じる経験から、自己効力感を育てることにもつながります。

『努力し、やり遂げ、周囲に認められる』という経験を積み重ねていくと、自分に自信を持つことができます。逆の経験が増えると、自信を無くし劣等感を募らせていきます。

劣等感が強まると、人間関係や学力にも影響が及びます。

子どももだいぶ大きくなり、親と過ごす時間も減っていきますが、努力している過程を褒め、やり遂げたことを認める、そういったチャンスを見逃さないようにしましょう。

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5. 青年期:同一性(アイデンティティ)を確立する時期

青年期には、第二次性徴や性的欲求の高まりなどによって男らしさや女らしさを意識するようになります。また、同時に「自分とはどんな人間か」「何になりたいのか」に関心が向くようになります。

以前は青年期は22歳頃(大学卒業前後)までとされていましたが、最近では30歳前後までがこの青年期に当てはまると指摘する人もいます。

アイデンティティの確立を先延ばしにすることを心理的モラトリアムと呼び、こういう人たちをモラトリアム人間と表現します。モラトリアム人間などというと、あまり良くない意味で使われることがあるようですが、エリクソンは悪い意味では使っていません。

世の中が豊かになったため、青年期(または学生時代)が長くなり、人生の重大な決定をする前に様々なことを考え、試すことができるようになったのです。その結果、より良いアイデンティティの確立ができれば、それは良いことだという意見もあるようです。

 

アイデンティティとは「自分は自分である」という確信や自信です。

誰もが「自分は自分である」という自信を持つためにもがき苦しむ時期があり、その中で、自分なりの価値観や仕事などを見出して、社会生活を送っていくようになります。

無事にアイデンティティを形成することができると、その人は自分の人生を捧げるべき対象を発見できるようになり、「忠誠心」という力を獲得するそうです。

青年期は心も体も揺れ動く不安定な時期なので、自分のことが分からなくなって混乱し、うまく同一性を確立できないままになると、人格や情緒が安定せず、依存的になったり、対人的な不安が強くなったり、非行や選択を回避するなど、社会にもうまく適応できなくなってしまう可能性が高まります。

バイリンガルで、とくに外国で暮らしたりそれに近いインターナショナルスクールのような環境で子どもを育てていると「自分はどこの国の人なのか?」といった疑問を子どもが抱くことがあります。

そういった時にお子さんの心の支えになるのは青年期以前に培った、基本的信頼感や自己肯定感、自己効力感、自分に対する自信です。

 

6. 成人期:親密性の適切なバランスを身につける時期

初期成年期は、就職して結婚するまでの時期です。

ここでの親密性とは、自分の関わる物事に親密さを感じることであり、他人と互いに親密な関係性を築くことです。青年期までの発達が順調であれば、自分に自信を持つことができ、自分のアイデンティティと、他者のアイデンティティを尊重し合うことができるようになります。

年齢相応に親密性を持つことで、現実世界で適切なパートナーに出会うことができ、就職、恋愛・結婚といった人生の節目を上手く乗り切ることができるようになると言われています。

それが、すなわち「愛」という力を獲得したということにもなります。

逆に、親密性の獲得が上手くいかないと、情緒的で長期的な人間関係が維持できず、表面的で形式的な人間関係しか築けずに孤立していきやすくなります。

 

7. 壮年期:世代性(次の世代を育てること)に興味を増す時期

壮年期は、結婚して子供を産んで育てる、親として過ごす時期とも言えます。

世代性とは、親密な存在や次の世代を育てていくことに関心を持つという意味です。

この時期は、子供を産み育てることだけでなく、自分の後輩などへの教育や、地域の伝統の継承など、多少自らの時間や労力を割いてでも自分以外の何かに関わることへの興味が増し、そこから一人では得難いものを得られるようになるとされています。「世話」をする力のことです。

しかし、世代性がうまく獲得できないと「自分が第一」という感覚が抜けず、人間関係の停滞や次第に疎遠になっていく、といったことの原因になるそうです。

 

8. 老年期:自己統合(統合性)を獲得し、人生を受け入れる時期

老年期は、子育てが終わり、仕事もリタイアする時期であり、身体の老化と直面し、死と向き合うことになる時期です。

とは言っても、最近のリタイア後の60代〜70代の方々はとっても元気ですよね。全体的に、このライフサイクルの理論が後倒しになっているような印象です。

自己統合(統合性)とは、老年期までの各発達段階で獲得してきたものを振り返り、自分の人生を受け入れて、前向きな意味付けをしまとめることです。

統合性を獲得すると、気分や情緒が安定し、円滑な人間関係を維持したり、趣味・ライフワークを心の底から楽しんだりすることができます。

しかし、自分の人生を受け入れられないままだと、人生を後悔して新たな自分を探し求め、身体の老化や時間のなさに不安や焦りが募って絶望してしまうと言われています。

できれば、「良い人生だった」と思いながら、生涯を閉じられるような歳の重ね方をしたいものですね!

 

まとめ

エリクソンの心理社会発達的理論(ライフサイクル理論)と、その時々の子育てのポイントなどを紹介しました。

親の存在が特に大きな影響を与えることができる時期は、乳児期から青年期くらいまでです。

その間に、いかに、お子さんに愛情を注ぎ、愛されているということを本人がわかるように伝え、自信をつけてもらうか、親としてできるだけのことをしてあげたいですね。