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心理学の歴史と今。多くの情報の中から、子どもの教育や心の問題に役立つものを選び応用するために知っておきたいこと

『心理学』という言葉はいろんな場面で耳にしますし、お子さんに何かメンタルや行動の困りごとがあったときには精神科医やカウンセラーのお世話になるということは何となく知っている方も多いでしょう。

明らかに何かの疾患や障害が疑われる場合はもちろん精神科医の診断を受け、適切な治療をすることが必要ですが、それ以外の日頃の関わりや、ちょっとした悩み事などにも、知識があることで余裕を持った考え方や対応ができるかもしれません。

でも・・・

とてつもなく多くの精神科医や心理学者、理論などが存在するため、実際の教育や心の問題への対応などを具体的にイメージしにくいですよね😓

今日は心理学の歴史と現在までの流れを、超シンプルにまとめてみます。

振り返りながら、親として知っておくと役に立つかもしれない(!?) 豆知識を補っていただけたらと思います。

初心者の方にも理解できるように書いていますので、業績など内容がかなり端折ってあるところはどうかご了承ください。またご紹介している本は私の主観で選んでいます。

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現代心理学の3つの潮流について

第1勢力:精神分析学(力動的心理学)

ジークムント・フロイト

フロイトはオーストリアの精神科医です。彼が人の意識を自我(エゴ)と無意識(エス)と名付け「人の意識はエゴとエスの戦いで、無意識が自我を抑圧しようとする」と提唱したこと、人間の発達について「口唇期、肛門期、男根期、潜在期、性器期という5段階がある」といった理論を唱えたことや『夢判断』はとても有名ですね。

フロイトは言葉,行動,空想,夢,精神的または身体的症状といった無意識的なものの意味を理解し、これを意識化するように働きかける方法を精神療法とし、その療法によって得た経験に基づく精神病理学的理論を合せて精神分析と呼びました。1920年代から60年代にかけ、多くの弟子たちが様々な理論を唱え、分派が生まれました。

心的事象を原因と結果の連鎖とみなして、原因に重点をおきながら全体を力動的にとらえ、体系的に解明しようとする心理学を力動的心理学と呼びます。

今では精神分析は治療としては科学的根拠に乏しいとされており(そもそも科学的な根拠を検証することが難しいということもあります)、アメリカの臨床現場でもあまり行われなくなって来ています。

アルフレッド・アドラー

ジークムント・フロイトの共同研究者だったアルフレッド・アドラーは、アドラー心理学(Adlerian Psychology)という学派を作り、ユングは分析心理学(analistic psychology)という学派を創りました。

アドラーは、自身の心理学派と理論体系を『人間知(human knowledge)』と呼び、人間の心理現象を解明する限定的な心理学というよりも、人間の心理と行動全般に関する人間科学のようなものを構想していた点が、のちに発展する人間性心理学に近縁性があると言われる所以です。

アドラー心理学では、より現実生活の問題に密着した対人関係の分析やコミュニケーションの改善といった部分に重きが置かれています。

カール・グスタフ・ユング

ユングはスイスの精神科医であり、心理学者です。ユングの分析心理学(analistic psychology)では深層心理を研究し、心には意識されていない感情と観念の複合体が存在し、「コンプレックス(Complex)」の概念を創りました。

個人の「心・魂(Psyche)」は、自我が中核をなす意識と無意識にまず二分され、無意識を更に、個人的無意識と集合的無意識に分けました。

さらに人間を「内向」と「外向」の2つのタイプに、人間の心を「思考」「感情」「感覚」「直感」の4タイプに分け、2×4=8のパターンに分類し認識することで、自分の優れた面や弱い面を自覚し、自己を高めることができるという理論を考えました。

エリク・ホーンブルガー・エリクソン

フロイト、アドラー、ユングらの次の世代で有名なのがエリクソンです。

エリクソンはウィーンでフロイトの娘、アンナの弟子になり、精神分析を学んだのち、アメリカへ移住しました。『心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)』を提唱し、『アイデンティティ(自我同一性)』の概念や『基本的信頼(感)』という概念を創りました。

精神分析、力動心理学の考え方の中でもこのエリクソンのライフサイクル理論は人が生まれてから死ぬまでに心理社会的にどのように発達するかに関するもので、興味深いです。

エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)と、親として気をつけたい声かけや関わりのポイント

2016.12.03

あまり科学的とは言えませんが、精神分析的な考え方と子育ての関連性について読んでみたい方にはこのような本もあります。↓

第2勢力:行動主義心理学

行動主義心理学は実験心理学などとも呼ばれ、精神分析と同時代に盛んになりました。

心理学はまず実証可能な学問であるべきで、扱うのは自己の意識ではなく客観的データ、つまり外界の刺激(S)と生体の反応(R)である、と考える一派のことです。

この身体的世界は一連の刺激(S)―反応(R)を、医学生理学的メカニズムの集積だとみなすところに特徴があります。

心は「ブラックボックス」であるとし、心理学者が研究できるものでも、すべきものでもないとし、心について述べることは非科学的であると主張しました。

行動主義に影響を与えた主な人物

ジョン・ワトソン

ワトソンらは意識を対象とする心理学に反対し、観察可能な刺激や反応に着目する自然科学としての心理学を提唱し(行動主義宣言)、行動主義心理学を創始しました。

心理学の目的は行動の法則を定式化し、行動を予測し、それをコントロールすることであると論じ、行動の単位は刺激―反応の結合からなると説明しました。

ワトソンの実験とは?

生後11ヶ月の幼児に、恐怖条件付けというものを行った実験のこと。白いネズミを見せて、触ろうとする行動を行うと、その背後で鋼鉄の棒をハンマーで叩き大きな音をたてた(実験前、その幼児はネズミを怖がっていなかった)。実験後アルバートはネズミだけではなくウサギ、毛皮のコートなど類似の特徴をもつものにも恐怖を抱くようになった。この実験から『おとなの抱く不安や恐怖も、多くはこのような幼年期の経験に由来している』とワトソンは主張した。この研究は、情動のような複雑な反応も条件づけられるということを示すだけではなく、それが取り除かれるのでえあれば、それはある種の心理療法(行動療法)と考えることが可能であると示した。

バラス・スキナー

帰納的で、徹底的行動主義の立場に立ち、行動分析学を体系化した。外側から観察可能な行動に限定せず、人間が行うすべての行動を研究対象として、行動が形成・維持・抑制する過程を分析しました。

また、直線走路を用いて研究が行われていた時代に、レバーを押すと自動的に餌が出てくる仕掛けを施したラット用の箱型実験装置である『スキナー箱』や、反応の記録装置として累積記録器を考案。スキナー箱はその後、さまざまな実験動物用に改変され、薬理学や遺伝学の研究にも活用されています。

スキナーの業績に基づいた実践理論は応用行動分析(ABA)として発展しており、会社組織での人材育成や学校での学習教育のほか、発達障害児の支援教育、カウンセリング場面(臨床行動分析と呼ばれることが多い)やイルカ・犬などのペット動物の訓練技術として幅広く応用されています。

オペラント条件付けの理論を子育て中の声かけに応用する記事を書きました。

知らなきゃ損!子どもを上手に導くことができ、親も子育てがラクになる心理学の知識、オペラント条件付けとは?

2016.11.08

 

第3勢力:人間性心理学

1960年代から70年代に、主に臨床心理学の分野において盛んになったのが人間性心理学です。

人間性心理学は、当時の心理学界を席巻していた二大勢力、精神分析と行動主義を厳しく批判する立場として台頭しました。

精神分析では人間を無意識的本能や衝動によって突き動かされるものであり、生来的に悪しき存在だと捉えていること、行動主義では刺激と反応の連鎖によって機械的・操作的に動かされるものだと捉えていることに対し、意義を唱えます。

人間性心理学では、人間の潜在能力と自己成長能力を重視し、人間とはよりよき生に向かって歩む主体的存在であると考え、人間性を全体的に捉える点に特徴があります。

人は本来的・生来的に自己実現に向かう欲求と動機を持っているものとし、それに向かって人間性を開発、伸長していく存在であるとしているため、実存主義的とされることもあります。

アブラハム・マズロー

マズローはアメリカ合衆国の心理学者であり、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で示した『自己実現理論(じこじつげんりろん)』を提唱しました。これは『マズローの欲求段階説』とも呼ばれます。

彼ははじめは極めて科学的な方法論をとっていたのですが、次第に哲学的になっていきました。晩年には心理学の第四勢力として、個人や自我の枠組みを超越した普遍的な『トランスパーソナル心理学』を提唱しましたが、目に見えない精神世界を更に宇宙・超越体験・神秘主義・宗教性と結びつけたため、科学的・学問的な価値は認められませんでした。

マズローの欲求5段階説(自己実現理論)とは?自己実現できる子を育てるために、親には何ができるのか?

2016.12.05

カール・ロジャーズ

カール・ロジャーズは、アメリカ合衆国の臨床心理学者で、クライアント中心療法(Client-Centered Therapy)を創始しました。カウンセリングの研究手法として現在では当然とされているセラピーの内容の記録や逐語化や、心理相談の対象者を患者ではなくクライエントと称したのも、彼が最初です。

2000年頃からは根拠に基づく医療がますます求められる時代へ

ロジャース以降、カウンセリングや心理療法、精神療法がさらに発展していきます。

行動心理学に基づいた心理療法として行動療法がスタートしましたが、行動主義では心について言及しないこととしていたことからその考え方に疑問を持つ研究者が増え、そこから認知心理学が生まれました。

その後、認知心理学は、人間の内面的な部分を追求する心理学として、急速に発達、やがて行動心理学と認知心理学が歩み寄り、それぞれの成果をお互いに取り入れるようになりました。そうして生まれたのが、認知行動療法です。

注:現在では、単に行動療法と言った場合でも、実際には認知行動療法を指すこともあります。

そして、行動主義、または、認知心理学的な技法による有効性が科学的に証明されるようになってきました。

それらの技法の中には認知行動療法、対人関係療法、マインドフルネス認知療法といったものがあります。こういった技法をマニュアル化することで、より標準化された形で普及していくことが可能となりました。

根拠のある治療が受けられる時代になってきたことは本当に素晴らしいことですね!

 

アルバート・エリス

アルバート・エリスはアメリカの臨床心理学者で、短期治療法を信じ、ジークムント・フロイトの精神分析のような長期治療を要するメソッドに挑み、1955年には心理療法の新しい手法として論理療法(Rational Therapy)を考案しました。

彼は「治療に何年もかける必要はない」と述べ、時の心理学者や精神科医には愚かだとみなされることもありましたが、アーロン・T・ベックと共に、短期間で効果を出す治療法の発展に貢献しました。

アーロン・T・ベック

ベックはアメリカの医学者、精神科医です。うつ病の認知療法(Cognitive Therapy)の創始者で認知行動療法の理論的基礎を築きました。当初は精神分析的な立場からうつ病の研究を実施していたようですが、自身の仮説を検証することができず、1961年までには精神分析と決別しています。
その後、研究の過程で、うつ病患者は悲観的な思考(否定的な考え方)を特徴的に持つことに気づき、こうした認知の偏りを修正する新たな治療的アプローチとしてうつ病の認知療法を1963年に考案しました。

⬇️対人関係療法の発展には、アメリカの精神科医、アドルフ・マイヤーとハリー・スタック・サリヴァンが大きく貢献したと言われています。

ママ友付き合いに疲れたらこちらをどうぞ

⬇️そしてこちらが今流行りのマインドフルネスです。

我が子のプリスクールではyogaのレッスンがあるのですが、そのときにマインドフルネス瞑想の方法を教えてくれたそうですよ!

アメリカでは幼児教育にも取り入れられるほど浸透している、ということがわかりますね。

まとめ

今日は、心理学の歴史を振り返りましたが、まず最初にお伝えしておきたいのは、病気や障害が疑われるような症状がある場合には、できるだけ早めに専門家に相談することが大切だということです。

病気や障害の症状や影響が生活の中に浸透してきってしまう前に適切な介入をすることで、その子が暮らしやすい、より良い状況を作りやすくなるからです。

子育て世代の私たちがお世話になるようなメンタルヘルスの専門家は、科学的に根拠の証明されている認知行動療法や対人関係療法、マインドフルネスといった治療法について学び実践していることが多いです。

薬に抵抗のある方は、それも含めて、思い切って相談してみる価値があると思います。

一方で、私がママ友さんなどからプライベートで受ける相談には「ウチの子は発達障害なのではないか?」「ADHDかも?」という内容のものが非常に多いです。

でもよくよくお話を伺って状況を整理してみると、実際は環境の変化や家庭での関わりなどの影響でお子さんが一時的に荒れてしまっているだけだということに親御さんが気付いていなかったりするのです。

例えば、

引っ越したばかりでまだ学校の友達関係も落ち着かず、お子さんが適応するために一生懸命頑張っている時期に、新しい習い事を増やしてしまってさらに負荷をかけている、とか

お母さんに気付いて欲しくて、注意を引きたくていたずらをしているのに、お母さんが感情的に怒ってタイムアウトをして突き放してしまって、さらに悪循環になってしまっている、とか

お子さんも親御さんもどちらも悪くないのになぁ・・・と思いつつ、でも、ことあるごとに噛み合わない親子というのもじつはたくさんいるようです。

親子であっても、それぞれ別の人間ですし、「何を大切に思うか」「何に気がつきやすいか」など、性格の違いもありますから、相性があるというのも頷けますよね。

ただ、そういった場合であっても、お子さんがそのようなことに気付くのは相当難しいことなので、やはり親サイドが状況を把握し、声のかけ方や対応を変えていくほかありません。

自分の子どもとはいえ、一人の人間なので、親も自分の言動が本当にその子のためになっているのかどうか、逆効果なことをしてしまっていないか、客観的に見る力を育てて行けると良いですね。

 

心理学について知っておくと考え方の幅を広げることができますし、お子さんがより気持ちよく新しいことを吸収したり、マナーやルール、生活習慣を身につけることがスムーズになるでしょう。

日々の声かけや対応に役立つ心理学的なヒントをくれる諸説には、例えば

知らなきゃ損!子どもを上手に導くことができ、親も子育てがラクになる心理学の知識、オペラント条件付けとは?

2016.11.08

エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)と、親として気をつけたい声かけや関わりのポイント

2016.12.03

マズローの欲求5段階説(自己実現理論)とは?自己実現できる子を育てるために、親には何ができるのか?

2016.12.05

といったものがあります。

気になる方は、それぞれの記事を御覧ください😊

私自身は、こういった知識は教養として得ておきながらも、すべてがそれに当てはまるわけではない事を理解しておくことも大切だと思っています。

いちばん大事なのは、とにかく目の前の子どもを良く観察して(親であっても感情的にならずに極力客観的に、丁寧に)、そしてケースバイケースに考えることを怠らないというスタンスでいることです。